the end of genesis T.M.R. evolution turbo type D「Suite Season」(2000/2/2)

1. Prologue~KAGEROH~Chapter #01
2. 陽炎-KAGEROH-
3. はじまる波
4. Nocturne~GEKKOH~Chapter #02
5. 月虹-GEKKOH-
6. Serenade~winter dust~Chapter #03
7. 雪幻-winter dust-
8. 風のゆくえ
9. Epilogue~KAGEROH~Chapter #04


T.M.Revolutionとして大ブレイクを果たした西川貴教が突如としてT.M.R封印を宣言したのが1999年の春。

そして、T.M.Rをさらに進化させるために新たに始めたのがこのthe end of genesis T.M.R. evolution turbo type D(以下、T.M.R-e)というユニットです。

この妙に長いユニット名のインパクトもさることながら、このT.M.R-eはこれまでのT.M.Rとはまったく違った展開をし、ファンを驚かせたことと思います。

当時は歌以外にもANNなどでトークの面白さを発揮したり、テレビにも多数出演していた西川さん。CDセールスも30~50万枚と高い数字を維持していました。しかし、このT.M.R-eはその最初のシングル「陽炎-KAGEROH-」を15万枚限定にしたり、メディア露出を限定的にしたりと多くいたファンを絞るような行動を起こすのです。しかも、曲はすべて大真面目なシリアス系のもの。「HIGH PRESSURE」や「HOT LIMIT」などのノリノリなタカノリを求めるリスナーには良く思われなかったのではないでしょうか。枚数限定リリースをやめて以降もセールスは伸び悩む結果となります。

結局、2000年の春にはT.M.R復活となり、T.M.R-eは約1年の活動を経て終了となりました。

そんなT.M.R-eの活動を総括したのがこの「Suite Season」。

結論から言いますと、このアルバムが非常に名盤なんです!

なんか妙に長い名前に改名するし、これまでの活動を否定するようなシリアスさだし、西川さん迷走してるの?とか当時思われてしまっていたのかもしれませんが、このアルバムを聴けば、T.M.Rを進化させるっていうのは大マジだったんじゃないかと思わされます。それほど洗練された出来です。

収録曲はT.M.R-eとしてリリースされたシングル3曲にアルバム曲を2曲、インスト4曲の全9曲入りと、ミニアルバムのような形態の今作。すべての曲はバラバラではなく、世界観がリンクしているストーリー性のある内容になっていて、全曲を通して季節と共に移り変わるある男女の恋愛模様がドラマチックに描かれています。

T.M.Rのヒット曲は歌詞が直球で分かりやすいものが多かったですが、今作ではどの曲もこれまでのハイテンション♪な様子は鳴りを潜め、やや抽象的で難解な表現が多々用いられており、ガラッと変わった世界観が非常に新鮮です。作曲面で見てもいつもとは一味違います。勿論作・編曲を担当するのは浅倉大介さんですが、今作ではとても凝った楽曲を用意。どの曲も季節を繊細に表現した静かな曲調でありながら、熱を失わない上質なバラードであり、西川貴教というボーカリストの力を最大限引き出していると思います。アレンジも凝っていて、1曲の中で曲調が変化するドラマチックな「陽炎-KAGEROH-」や、秋を表現した寂寥感ある「月虹-GEKKOH-」、そしてしんしんと降り積もる雪の中に一人でいるような孤独な寒さを感じさせる「雪幻 ‐winter dust‐」とどれも素晴らしいの一言に尽きます。

アルバム曲である「はじまる波」「風のゆくえ」も良曲であることは勿論、アルバムの世界観を構築する重要なピースであり、こちらの2曲も外せないですね。

インスト含めた9曲でフルプライスという価格はさておき、コンセプトアルバムとしてはとても優れた作品で、それまでのT.M.R像を一変させる名盤だったと言えるでしょう。

このアルバムでしかT.M.R-eは振り返れないし、今となってはこの時の楽曲は全然話題にもならないしと不遇なアルバムではありますが、その内容は間違いがないです。私は「THUNDERBIRD」がT.M.Rでは1,2を争うくらい好きだったので、同じような方は結構しっくりくるアルバムなんじゃないかと思います。

興味のある方は聴いて損はないと思うので中古で見つけたりしたらぜひお買い求めください。