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BUCK-TICK櫻井敦司のソロプロジェクト、THE MORTALによる「TOUR THE MORTAL 2015」のNHKホール公演2日目に行ってきました。


いやぁ、正直これほどのものとは思いませんでした。予想を上回るMORTALの世界。

この日、NHKホールはTHE MORTALによってまったくの別世界へと変貌を遂げたのです。







NHKホールに来るのは昨年の「或いはアナーキー」ツアー以来。

あの時も空は厚い雲に覆われていましたが、偶然か必然か、この日もどんよりとした曇り空。

このとき、ここはすでに魔の世界へと変わり果てていたのだろうか。
そんな錯覚を抱くほどに、この夜のステージは素晴らしかったのです。


先んじてリリースされていたアルバム「I AM MORTAL」をメインに据えた今回のライブツアー。

ステージには、映像を映すためのスクリーンがかけられたままでしたが会場が暗転。
退廃的な映像が映し出され、終わりに「THE MORTAL」の名前が表れます。

そしてスクリーンはそのままに演奏がスタート。1曲目はアルバムと同じく「天使」。


この「天使」からして鳥肌が立ちましたね。

もちろん曲が素晴らしいのは言うまでもないですね。重暗いこの曲の迫力は生で聴くとより一層凄みがあるのですが、それをさらに強力なものへとするのは光と映像の妙技。

ライトに照らされ、シルエットして浮かぶ櫻井さんの姿を囲うようにして映された三角錐にどろりと流れた赤い光のうねりが、「天使」の曲に渦巻く情念にマッチしていて、凄い光景でしたね。

すでにこの1曲目ではっきりとMORTALの世界観が打ち出されており、度肝を抜かれました。

THE MORTAL自体が櫻井さんの描く強固な世界観を実現させるプロジェクトでありますから、やはりその統一感は目をみはるものがあります。しっかりと一つのコンセプトに貫かれたライブは劇のような様相を呈していました。

この劇的な幕開けによって、一気にNHKホールは「MORTAL劇場」と化したのです。

「天使」が終わり、スクリーンが取り去られると「DEAD CAN DANCE」が始まりました。素早く明滅し鋭くステージを照らすライトが楽曲を盛り上げます。

その後も次々とアルバム楽曲が披露されていくわけですが、CDで聴くよりも鮮明にイメージが浮かぶ分、楽しめる幅が広がったなと思いました。どうしても初聴きのときはテンションの低いアルバムだなと思ってしまったので、生で聴いてこそというか、櫻井さんのやりたかったことってこれだったのね!と合点がいったというか。


さて、メインは「I AM MORTAL」の楽曲世界なのですが、それだけではなく今回は2004年の櫻井敦司ソロ作品もTHE MORTALとして披露されました。

10年の時を経て再び甦る作品も非常に見応えがありましたね。

私は特に「SACRIFICE」が好きなので、ここで聴けたのは嬉しい誤算。その後も続けて「ハレルヤ」「惑星」と3曲のソロ曲がバンドで披露されました。

ただ、セットリストの都合上、この櫻井ソロ曲で「MORTAL劇場」が寸断されてしまったのは惜しいところか。

「ギニョル」からの「Barbaric Man」がそのままの流れで披露され、本編ラストの「Mortal」、そして「サヨナラワルツ」へと繋がっていたらより没入感の高いライブになったのではないかと思います。

でもまぁ、それにしたって「Mortal」→「サヨナラワルツ」の流れは激熱でしたね。

「Motarl」の始まるときに会場が紫色の光に包まれ、まるで闇に包まれたかのようなあの瞬間。そして、そこから闇が明け、演奏が始まる時、筆舌に尽くしがたい光景でした。素晴らしすぎた。

「Mortal」が終わり、締めの「サヨナラワルツ」もとにかく素晴らしく、これまで創り上げて来たMORTALの世界が崩れていき、終わりを告げる、そんな光景が映像とともに繰り広げられました。完璧なエンディングです。

ある意味、ここでライブ終わっちゃってもよかったかもしれません。それくらい完璧な流れでした。


さて、本編がアルバム通りの完璧な流れで終わりを迎えた後、アンコールでは「Spirit」から3曲が演奏されました。

すっかり「I AM MORTAL」に夢中になってましたが、「Spirit」もカバー楽曲含めてTHE MORTALの世界観を構築する重要なピースですからね、こちらもやはり良いですね。

そして、ダブルアンコールではMCがあり、櫻井さんから「MORTALはここで一度死にますが、いつかまた甦ります」という後の復活を匂わす宣言が!

ダブルアンコールで披露された「予感」「新月」「猫」、そしてこのたびリリースされた「愛の惑星」のリマスタリング盤にて初音源化となった「EXPLOSION」の4曲が、さしずめTHE MORTALへのレクエイムといったところでしょうか。

圧倒的な世界観を提示したTOUR THE MORTALもここで幕引き。静かに眠りへとついたのでした。


しかし、THE MORTALの継続宣言とも取れるこの発言は櫻井敦司ファンには嬉しいですね。

あくまでBUCK-TICKが主軸であり、そこはブレないで欲しいと思うのは当然なのですが、こうして櫻井さんのよりパーソナルな部分、思い描く世界に触 れられるような場所というのも貴重ではありますから、ぜひまた機会があればやっていただきたいです。


というわけで、THE MORTALのライブはとてもよかったです!

はっきり言って、CD発売前だし、全然THE MORTALの内容がわからないうちからチケット取っちゃったし、どうしようかなーとか思うこともあったのですが、これは間違いなく行って正解!

簡単に「世界観」などと宣うアーティストは数知れずですが、今回のTHE MORTALは間違いなく一つの「世界」を構築し、それを私たちに見事提示してみせたと断言できます。

次にTHE MORTALを見る日がいつかはわかりませんが、彼らがその永い眠りから覚めるとき、私は再びMORTALの世界へ誘われ、驚愕の世界を目の当たりにするのでしょう。

その時が、すでに今から楽しみです。