鬼束ちひろ「good bye my love」(2016/11/2)

1.good bye my love
2.夏の罪
3.碧の方舟(acoustic version)
4.月光(Live)




今作は鬼束ちひろにとって「This Silnce Is Mine/あなたとSciencE」以来、3年ぶりとなるシングル。

前作がリリースされた2013年頃は「アウト×デラックス」への出演などもあり、一時的に鬼束ちひろが話題になった年でもありました。主に豪胆な性格や派手な化粧、しゃがれた声にばかり注目が集まってましたが。

確かに初期の「月光」の頃のイメージが強いと、2000年代後半くらいからの鬼束ちひろの変貌ぶりは「なんかヤバいものに手を出したのかな?」とか思っちゃったりしなくもないですし…見た目はともかく実際に2013年の頃は声もしゃがれてて昔のような歌声ではありませんでしたから、個人的にはそっちのほうが気になるというか、残念だったというか…。

ですが、3年の沈黙を破って公開された今作「good bye my love」のMVを見て、私はえらく驚きました。


”鬼束ちひろ”が帰ってきたと。



「good bye my love」


まず、そのビジュアル。これは今年の春のライブ等の様子を見て知っていましたが、映像で見るとまた改めて実感します。一時の派手なメイクは鳴りを潜め、初期のようなナチュラル美人になっています。

そして、やはり歌声ですよね。以前のような透き通る歌声に戻っています。これには感無量。公式が直々に「完全復活」を銘打つだけあります。表題曲「good bye my love」も愛の終わりを切なく大きなスケールで表現したバラードとなっています。聴き応えのある厚いアレンジが実にメジャー的で、王道的なバラード曲。鬼束自身も「感情をぶつけて書くのではなく、50代や60代になっても歌えるかと考えて穏やかな気持ちで制作した」とインタビューで話すなどしていましたから、意識的にメジャー感のあるバラードに仕上げたんでしょうかね。


他にもカップリングとして昨年に花岡なつみに提供した「夏の罪」のセルフカバー等を収録。「夏の罪」は花岡なつみが結構鬼束に寄せた歌唱をしていたので「これは鬼束自身が歌ってもかなり映えるな」と思っていたのですが、期待を裏切らない出来でやっぱりね!といった感じ。花岡なつみver.はロックアレンジでしたが、今作ではアコースティックアレンジに。編曲を手掛けたのは2003年まで鬼束をプロデュースしていた羽毛田丈史。実に13年ぶりの楽曲プロデュースとなりました。


そして、3曲目に収録されているのがこれまた新曲「碧の方舟」。「good bye my love」と同時期に書かれたらしい曲で、当初は別アレンジだったのか、今作のものには「acoustic version」と付けられています。個人的には今作の中ではこの曲が一番好みでした。ピアノのみのシンプルなトラックに響く伸びやかな高音と深く心に沁み入るメロディは初期を彷彿とさせつつも今の鬼束ちひろを打ち出していると感じました。「good bye my love」に表れなかった感情的な部分がこちらに出ているのか、抽象的に表現された歌詞は鬼束ちひろらしい世界観を展開していますし、繰り返し聴いて楽しみたい曲です。



というわけで、鬼束ちひろが3年ぶりに放った今作。間違いなくこれは「完全復活」です。

さらに今作を聴いて分かる通り、類まれなる作曲センスはそのままですから、今後も更なる良曲が生み出されるのでは、そんな期待が持てるシングルでした。

みなさんもぜひ鬼束ちひろに「再会」してみてください。











もちろん、鬼束ちひろさんが「変わった」なんて勝手に言ってるのは外側の人間だけで、本人は別にそんなこと意識してないでしょうし、これからもマイペースに活動してくれたら結構なんですけど。そんなところも好きですからね。




<追記 2017/1/17>

◆鬼束ちひろ CONCERT@中野サンプラザ(2016/11/4)


写真 2016-11-04 18 21 31

















「good bye my love」も事前に予習し、期待を高めて臨んだ鬼束ちひろの中野サンプラザ公演でしたが、予想の遥か上を行く良さでした。

ピアノ、チェロ、パーカッションのみのシンプルなステージに白い衣装を身にまとった鬼束ちひろが颯爽と現れて次々に名曲を熱唱していく様に圧倒されたというほかありません。

序盤、「Cage」ではやや音程が不安な部分もありましたが、曲が進む事に伸びやかに、感情的になり高まっていくボーカルは凄まじく、聴く人の心を鷲掴みにするような迫力がありました。厳粛な雰囲気のなか、じっと歌に耳を傾ける、こんなコンサートは初めてです。

特に、「私とワルツを」からの引き込みが凄く、鬼束自身にも動きが見られるようになり、歌に気持ちが乗っているのが目に見えるようです。その高まりは「BORDERLINE」で強烈に炸裂し、息を切らし、ステージにうずくまりながら絞り出すように歌う姿は軽い狂気さえ感じさせるもので、思わず息を止めて見入ってしまいました。

そんな緊張感のあるコンサートはMCやアンコールが一切なく1時間半という時間で終了しましたが、次々と繰り出される珠玉の名曲、全17曲には魂を抜かれたような、いや、逆に魂を満たされたような、そんな感覚です。ただ座って見てたはずなのに公演中体がこわばっていたのか、終わって立ち上がるとなんだか体が痛いという…。終わってからもコンサートの内容を頭のなかで反芻してはため息をつくという、どこか放心状態になってしまいました。いやはや、これが本当の歌の力なのですかね。

セットリストはオールタイムな選曲で「月光」を筆頭とした大ヒット曲から、個人的には大変嬉しい「MAGICAL WORLD」、新曲の「good bye my love」等、余すところなく鬼束ちひろを堪能でき、非常に満足。ステージ内容から考えても文句の付け所はなく、個人的に2016年最高級のステージだったなと感じます。

2月1日には約6年ぶりのオリジナルアルバム「シンドローム」のリリースを控えていますが、こちらもぜひチェックしたいと思います。

というわけで、今回の中野サンプラザ公演、やっぱり”本物”は凄い、としみじみ思ったコンサートでした。